休日出勤のため、11時頃に自宅を出て会社へ向かう。
今日はとても暖かく心地良い。自宅を出たところの桜は満開で、暖かく穏やかな風に乗せられて桜の花びらが舞っている。駅へ向かう途中のある一軒の家から男児が出てくる「おばあちゃん!公園行こうっ」駆け出す子供に続いて、髪を茶色く染めたおばあさん-60ぐらい召されているだろうか-が後を追う。「おばあちゃん、公園こっち!」と呼びかける男児に「今、行くよぉ」と応える老婦。
良い。文句なしに気分が良い。
仕事だとは言え、たかが2時間程度の作業だ。何よりこの陽気、そして満開のサクラ、無邪気な子供に、私と同じように春の陽気を楽しむ様子の老婦。「こんな幸せな1コマがあるだろうか」とステキな休日を噛み締めていた矢先の出来事だった。
「ここから行くねん、おばあちゃん」と発した後の男児の行動は、春の穏やかな休日の風景をスリルで手に汗握るワンシーンに早変わりさせる。
無邪気さは、時として残酷さを内包する。
「ここから行くねん、おばあちゃん」とおもむろに柵を乗り越えて公園に入る男児。
見るからして、柵はコンクリート製。高さからして老婦の腰あたり。
「こら、キチンと入り口から・・・」と子供を咎めることもなく、男児の後を追う老婦。
「まさか、あのバアサン。」
否が応でも期待が高まる私。
いや、だめだ。いくら何でも無理くさい。
あなたにあの柵は乗り越えられそうにない、早く気付いて。
堪能しても余りある程の心地良い春の陽気と、清々しい風にいくつかその花びらを乗せる満開のサクラは、
年老いた婦人にいらぬ勇気を与え、アタマの中まで春にしてしまう。