通勤に使う定期券が期限切れになっていた。数日の間、タイミングを逃し買えなかった定期券を券売機で更新購入する。
持ち合わせがないのだが、それでも今を逃すといつ券売機の前を販売時間中に通るか分からないので、取りあえず「ないよりマシ」とばかりに一ヶ月定期券を買うことにする。それにしても定期券の自動券売機は便利だ。更新とはいえ、申込用紙に自分の住所を書くことすら、最近で煩わしく感じてしまうのだから。
早速、あまり画面の説明文を読まないまま「同意」に何度かタッチをする。
¥7,310とのこと。
財布に一万円札があったことは記憶している。別に7千円はあっただろうかとお札を数えてみる。
「キンガク を トーニュー してください。」
あぁ分かってる。くそ6千円しかないわ。
おっと、ここで慌てて一万円札を先に入れてはならない。
大きな金額を先に入れようものなら、この券売機は投入口をさっさと締め切って精算を始めてしまうのだ。危うく要らぬ¥690を手にするところだった。
この場合は¥310から先に投入しなくてはならない。
「キンガク を トーニュー してください。」
おう分かってる。少し間延びしてゆっくりめに話す機会音声が妙に癇に障る。
小銭は、さっきのコーヒーのお釣りが財布にあったはずだ。
ほら、きっちり¥310。
「キンガク を フソク しています。キンガク を トーニュー してください。」
分かっとるわ!どこぞの誰が310円で定期券が買えると思うてるんや。てかお前が先に一万円入れたら勝手に締めてお釣りの計算始めるからこうしてるんやないか! 全く、よくしゃべるヤツめ!!
ほら一万円。イライラしながら、顔が横にビューと吸い込まれる諭吉君に最期の別れを告げる。諭吉君は別れの辛さを表に出すことなく最期まで表情を変えずに消えていった。
静けさが戻る。まるで券売機もその別れを惜しむかのように。
気を取り直したか、定期券への印字と思われる機械音がクシューンクシューンと鳴り始める。さっきまであんなに口うるさくしてたあなただから、きっと「しばらくお待ちください」とか言い出すのかと思ったのだが、それはないようだ。いや言えよ。
「ピッ」
機械音が鳴り止むと、真新しい定期券と三千円が券売機より吐き出される。
「・・・」
「・・・・・・」
え?「ありがとうございました」は?
なんとか言わんかい!なんで最後に「ピッ」だけやねん!
おかしいやろ「ピッ」は!
なんかほら制服着たお姉さんがお辞儀するコマとかないの?
なんでや、なんで言わんのやー! なんで「ピッ」やねん!