1月
2010
フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略
フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
クリス・アンダーソン
日本放送出版協会
フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略(Amazon.co.jp)
「ロングテール」という言葉を世に知らしめた米「ワイアード」誌編集長の新著。
なぜネット上ではこうも有益なコンテンツが「無料」なのか、どうやってそこから利益を得ているのか。そんな素朴な疑問から始まり、従来のアトム(モノ)から、ネットを中心としたビット(情報)が流通される経済において、貨幣の持つ意味とは何かまでを順を追って導いてくれる。
無料について考える
それらの疑問への回答に導くべく、まずは「無料」の意味を明かすことから出発する。「世の中に無料なんてものはない」とよく言われるが、ここでの「無料」とは狭い意味での貨幣の支払いがないのであって、代わりに支払われている貨幣以外のコストの存在が明かされる。また人間の心理の観点から「無料」の持つ意味や効果についても供述がある。
それでも無料じゃ食えません
さて「無料」の意味とそのパワーが理解できたとしても、本著ではボランティア活動ばかりを奨励しているのではない。ここからが本題である。無料から利益を生み出すビジネスモデルについてである。雑誌の編集者らしい情報収集によって、多くの企業のビジネスモデルやその利益構造が例示されるばかりか、無料を核とした、大きく4つのビジネスモデルへの分類が試みられている。その中で、従来経済での無料を意味するもの(別の商品に価格転嫁されている)と、ボランティアに近いもの、ネットバブル期に流行った広告などで賄われるものと、本書の軸でもある「一部のユーザーのプレミアム版(有料商品)の利用で賄われるもの」(フリーミアム)に分けられている。さらにそれら個別の構造についても分かりやすく説かれている。
さらなる武装とハウツーへの落とし込み
無料についての理解とビジネスへの適用の道筋ができると、細かな異論への反証や、これらのビジネスモデルを経済的な意味で捉えなおすことにより、これまでの主旨の肉付けが行われているので、これまでの曖昧さも解消される。巻末にはさらに贅沢なことにもっと多くのサンプルモデルの例示や、「無料のルール」といった原則として構築までされている。急いで上っ面だけを模倣して根源的な仕組みの理解不足を起こさないよう、巻末付録のハウツーは最後まで見ないでおくのが良いだろう。
最後に
単に「無料って何」という話かと思えば、従来の企業の利益構造を覆すほどの大きな挑戦が刷り込まれた本だった、大人気なのも頷ける。ネットが当たり前の若い世代には当たり前のことなのだろうが、それでも経済そのものの構造が変わりつつある気にさせられる。できれば旧来の利益モデルと合わせて理解を深めたい。モノを売り利益を上げる体系的なモデルの分類は、ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか(Amazon.co.jp) が分かりやすいので併せてオススメしたい。