2006年10月アーカイブ

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
城 繁幸 
光文社
若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来(Amazon.co.jp)

入社4年目に突入している程度の私にとっては、この本をレジに持っていくのが、なんだかコッ恥ずかしい。どう見たって、副題にあるような「日本の未来」を憂うようには少なくとも見えない、辞める辞めないの自分の問題を抱えているようにしか見えないはずだ。

厳密には「3年未満」というカテゴリからは外れてしまっている自分だが、著書でターゲットとして述べられる「若者」に自分はもちろん含まれており、そんな若者にとっては、あまりにショッキングな内容だ。ガツンとパンチの効いた風刺にえぐられるのではない、まさに著書が描く日本の未来のあまりもの暗さ、閉塞感、夢のなさにジワジワと心が塗りつぶされていく感覚を覚える。年功序列が崩壊してゆく過程にある中で、少なくとも若き人間は古き社会をスクラップすべく奮い立つべきなのだろうが、なぜだかそんな感覚を得られることはなかった。なぜだろう、私もここで述べられている「昭和的価値観」が抜けず、途切れたレールのその先にレールの幻覚を描いているのだろうか。 いや、やはりどうも内容が悲観的傾向にあり、問題提起には共感できるものの、当の若者としては、この本でその先の答えを探してはならない。もし答えが見つかったとすれば、「政治が悪い」というあまりにも安易な答えに思考停止するだけだろう。

そう、仕事の意味を改めて自分に問う、問題提起という位置付けにある。辞めるにしても、辞めないにしてもその理由を自分の中に見つけるためのスタートラインに立てた。そう考えれば、悲観的な中にも得るものがあると言える。

ユーザ中心ウェブサイト戦略 仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践

ユーザ中心ウェブサイト戦略 仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践
株式会社ビービット 武井 由紀子 遠藤 直紀 
ソフトバンククリエイティブ
ユーザ中心ウェブサイト戦略 仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践(Amazon.co.jp)

銀行業界では、使い勝手や標準準拠で有名な三井住友銀行のWebサイト、そこのリニューアルを手がけた株式会社ビービットが、ユーザー中心設計を基にしたWebサイト設計のノウハウを凝縮。Webサイト構築を考えるに、ついついデザインや色などのスタイルに目が移りがちだが、ここでは全て「ユーザーがどう思うか」、また「ユーザーがどう行動するか」が軸となる。

ユーザーの言語化しえない暗黙知や心理状態にも答えを求めるため、「どう思いますか」などと直接的アンケートで意見を請うのではなく、ユーザービリティテストによるシナリオ検証などにウェイトが置かれている(そのテスト手法も「そこまで明かして大丈夫か」と思うほど丁寧に紹介されている)。

「こんな方法で、あそこのサイトをリニューアルしたんか!」と飛びついて購入したのだが、頭で理解したつもりでも実践するには障壁が多い。「ユーザー中心」というコンセプトにじっくり腰を据えて、関係者を総勢巻き込んで地道にテストを繰り返す方法論には完全に脱帽。もちろん、誰でも簡単にできるノウハウならこんな風に書籍に起こしたりしないだろうし、簡単にマネできない自信があるからこそ、ここまで詳細な手順が明かせるのだろう。

インターフェイス設計だと、どうしても認知科学などの「人間の仕組みを知る」ことを起点にアプローチするものだとばかり思っていた。しかし、このように人間を完全なブラックボックスに見立てて、インプットに対するアウトプットを収集する方法は、理系が苦手な私にも引っかかりなく腹におちる。乱暴な言い方をすれば、結果よければ常識にとらわれることはない、ということか。

知に働けば蔵が建つ

知に働けば蔵が建つ
内田 樹 
文藝春秋
知に働けば蔵が建つ(Amazon.co.jp)

子どもは判ってくれないと同じく、内田樹(うちだ たつる)氏のブログ記事を再編集したもの。ジュンク堂天満橋店でコンピュータ書籍を眺めていたら、裏の棚が哲学書コーナーでタイトルが目に付いて購入。

靖国問題・中国の反日デモから、「無印良品」についてや、個人情報保護社会とリスク社会についてまで、幅広く論じている。冒頭の「はじめに」での記述、

教養とは情報ではない。教養とはかたちある情報単位の集積ではなく、カテゴリーもクラスも重要度もまったく異にする情報単位のあいだの関係性を発見する力である。

とあるように、どの問題についても道半ばで思考停止することなく、巧みに視座を変えながら、そして、フランス現代思想研究というバックグラウンドを礎に、さらに一歩踏み込んで考究しておられる。だから、私がついつい短見にはまってしまう(考えるにはスケールの大きな)国家間の問題や政治的な問題などの意見にはついつい「なるほどな」と鵜呑みにしてしまうのである。

論じる中身は一部重厚なものがあるが、口調は軽快で読みやすい。

社長をだせ!―実録クレームとの死闘

社長をだせ!―実録クレームとの死闘
川田 茂雄 
宝島社
社長をだせ!―実録クレームとの死闘(Amazon.co.jp)

あるカメラメーカーの消費者相談室、サービスセンター所長などを務めた経緯を持つ著者による、クレームの実例とその処方箋。前半の大部分を占める実録には、無茶な要望・要求を重ねてくる顧客に、時に温和に、時に毅然と立ち向かってきた、まさにクレームとの死闘の数々が描かれる。後半には、長きにわたるクレーム処理の実情から洞察するクレーマーのタイプ分類や、近年のクレームの傾向、最後には、そもそもクレームとは何かといったあたりの著者の意見が綴られている。

「こんな事言われたら、こう切り返すんだぁ」とハウツーが得られるのはもちろんなのだが、クレーム対策という仕事に対する著者の価値観、仕事観に大変感銘を受けた。(愉快犯的クレーマーが少数ながら存在する事実は認めながらも)一律に「うるさい客だ」と切り捨てることに注意を促し、メーカーの立場から、クレームを市場の声として、技術進歩の糧として捉え、お客様に末永くお付き合いいただけるよう誠意を持って取り組むその姿勢が滲み出てくる。

クレーム処理とだけ言うと、なんだかいいイメージのない仕事に見えてしまうものだが、少なくとも文章からは仕事への熱意と意気込み、イキイキした様子が伝わってくきて、いい仕事していらっしゃるな、と素直に思えたことが新鮮だった。

出現する未来

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出現する未来

出現する未来
P. センゲ O. シャーマー J. ジャウォースキー 野中 郁次郎 高遠 裕子 
講談社
出現する未来(Amazon.co.jp)

これは本当に長くて深い旅だ。

組織論、リーダーシップ論、知識創造論、変革プロセス、学習プロセスなどを論じたビジネス書として分類されるものであろう。しかし、環境問題から現象学、哲学、認知科学などが複雑に入り混じり、果てには仏教、道教からも知恵を拝借するわ、「雷がテントをの周りを回転するように落ちた」「祈ればクジラが飛び上がって応えた」など神秘現象まで出てくる。正直、ブッ飛んでる。ただ、現実逃避するような内容ではないし、オカルト的な内容がメインでもない。

ナレッジマネジメントの提唱者である野中郁次郎氏が監訳者になって、書籍の背後の帯に解説の抜粋が載っているのを発見して、即レジへ急行した。著者の一人と親しいようで、一緒に研究をされている様子も記述されている。さらには、複雑系システムの経済学者ブライアン・アーサーも文中に頻繁に登場するとあって、彼らの主張や研究内容に興味を持っている私としては鳥肌が立つほどの(実際、鳥肌が立った)内容なのである。私が「今までで一番良かったと思う本」に挙げることのできる、知識創造論や複雑系に関する書籍は、本書を読む前に是非目を通しておくべきと思うので、後日改めて紹介したい(なぜ、そちらを先に紹介しないのか、という疑問はもっともだが、奇をてらってこちらから紹介することにした)。実は、著者の一人、ピーター・センゲの有名なラーニングオーガニゼーションに関する書籍は読んだことがなかった。是非手に入れて読んでみたい。

正直、この内容をうまく紹介できる自信がない。バックグラウンドなしにAmazonで目次だけ見ても混乱するだけだろう。しかし、見るからに「売れそう」な希薄な内容ばかりのビジネス書と異なり、この書籍の内容は深くて重い。大きなパラダイムシフトを感じさせる、「名著」であると私は思う。

りそなの会計士はなぜ死んだのか

りそなの会計士はなぜ死んだのか
山口 敦雄 
毎日新聞社
りそなの会計士はなぜ死んだのか(Amazon.co.jp)

毎日新聞エコノミスト記者が追う、公認会計士の自殺とりそなショックのルポタージュ。随分短い期間で書かれた内容から、多少文章の荒さや構成が気になってしまうところがあるが、取り扱っている内容は非常に興味深いし、読み進めるにつれ目が離せなくなってくる。

会計事務所、大手銀行、金融庁のそれぞれが巨大な私欲をぶつけ合い、その狭間に立つ会計士の「苦悩」を読み取ろうと、守秘義務で囲われたピースを集め、自殺の訳について推論を導く。その過程でこの会計士は、何を信念として貫き通し、何を割り切って諦めてしまったのか。この人の死から、学ぶべきことが何であるかは分からない。ただ、何か心動かされるものを感じた。実は、古本屋で\105(税込)にて購入したものなのだが、非常に楽しめた。

ウォール街のランダム・ウォーカー―株式投資の不滅の真理

ウォール街のランダム・ウォーカー―株式投資の不滅の真理
バートン マルキール Burton G. Malkiel 井手 正介 
日本経済新聞社
ウォール街のランダム・ウォーカー―株式投資の不滅の真理(Amazon.co.jp)

投資を始めて半年になる頃だから、数年前に購入した書籍であるが、最近読み直したので晴れて紹介することにする。

株式相場は、誰にも全く予想のつかないランダムウォーク(千鳥足)を形成作る。という趣旨で、アクティブな投資信託よりもダーツで適当に決めた銘柄で分散投資を行う方が、長期的にはよりよいリターンが得られるとした、古き著書。市場には短期的にアノマリーが存在するものの、市場はやっぱり非常に効率的であるとする筆者の論調には、多少極端な感じがしないでもないが、一通り、自分で個別銘柄投資をやってみると記述内容の深みがよく分かる。

書中で一貫して主張される「バイアンドホールド戦略(購入して長期保有する投資方針)」が何よりもリターンが大きいとするのが納得できれば、投資とは、決して難しいものでもなく比較的初心者にも参戦の障壁を取り除くという意味において良著と考える。また、ある程度まとまった資産を運用することを想定すると、個別銘柄選定のコストも無視できず、結果、大いに分散させる、つまりはインデックスファンドの購入という論理でも私は充分納得できるのだ。

これを読んで、個別銘柄、アクティブファンドを売りたくなってきた私は流されやすい。自論なく他論に振り回される一番ダメなタイプかも知れない。表紙にて、千鳥足を彷彿とさせるのが雄牛(ブル=強気の意味)なのが趣き深い。

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