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半島を出よ 上

半島を出よ 上
村上 龍 
幻冬舎
半島を出よ 上(Amazon.co.jp)

待ってました。単行本の「反乱軍を名乗る北朝鮮コマンドが福岡を占拠」という内容紹介をチェックしたときから、ずっと文庫本での出版を待っていた。

実は今まで同氏の著作を一度も読んだことがないので、読み始めから個人的な好みや趣向に合うのかどうかを気にかけていた。始まる前には、10ページにもわたって登場人物の肩書きが続き、始まったらしばらく退廃した近い将来の日本がリアルに描かれており、読み進めるにつれ重苦しい雰囲気が心を覆い始める。

しかし、概ね登場人物(というか視点となるべき立場)が出し尽くされると、スリリングに歯車は回り始める。しかし、どんでん返しが待っていたり、伏線が張られていたりすることはあまりなく、大筋では「判りやすく」進行していく。その分、リアルな描写と緩急で揺さぶられる緊張感は、かなりのボリュームにわたる「判りやすい」進行であっても、決して飽きてこない。

著者も分野も今までに読んだことのないものだったので、どう感想を述べてよいやらわからない。とりあえず感じたことを列挙してみる。反乱軍云々の前に、背景として描かれてた預金封鎖が何よりも怖かった。何かを選ぶというのは同時に別の何かを捨てることだが、それがわかっていない人間が大勢いる。という台詞が気に入った。最後に少しホッとしたシーンが描かれていて救われた気がした。

暗号解読

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暗号解読 上巻

暗号解読 上巻
サイモン・シン 青木 薫 
新潮社
暗号解読 上巻 (Amazon.co.jp)

暗号にまつわる歴史を紐解き、そこに関わる暗号作成者と暗号解読者の攻防が、人間模様や社会情勢などを交えながら色鮮やかに描かれる。そもそも暗号が生まれた時から遡って描かれるため、原始的な仕組みから順を追って説明されるので、その時代の暗号の仕組みが判らないという事態が、読み進める楽しみを遮ることなく暗号の世界を案内してくれる。

こうにも日の目を見ない重苦しいテーマについて、あたかも冒険小説であるかのように未知の好奇心が持続できるのは、「あぁこれが解析されちゃ、これ以上強固な暗号なんてできっこない」だの「あぁこれほど複雑で少ないヒントでは解析できる訳がない」と何度も思わされるも、時代が進むに従って暗号作成者・解読者の優劣が何度も入れ替わり、その度に自分が成し遂げた訳でもないのに、なんだか晴れ晴れしい気分になれるからだろうか。

単純な文字の加除変換などによる難読化から、戦時中に大きな役割を果たした「エニグマ」、さらには現代においてコンピュータ通信で標準的に使われている暗号方式から、将来的な量子暗号まで続く案内は、読み物としてはもちろん、教養としても知っておいても無駄にはならないだろう。

何もかもそっちのけで一気に読んでしまった。こういった「科学」って、人間の何か根源的な好奇心を掻き立てられるなぁと改めて感じたのと(ムチャクチャ少し抽象的な感想だが)、こうした過去の偉人達の業績が、文字通り「積み重なって」今の生活基盤を成しているのだなぁ、と低俗な感想を吐き出してみる。

付録に「史上最強の暗号」と題した問題が付記されている。大丈夫、心配しなくても欠片も判らないから。

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