半島を出よ 上
村上 龍
幻冬舎
半島を出よ 上(Amazon.co.jp)
待ってました。単行本の「反乱軍を名乗る北朝鮮コマンドが福岡を占拠」という内容紹介をチェックしたときから、ずっと文庫本での出版を待っていた。
実は今まで同氏の著作を一度も読んだことがないので、読み始めから個人的な好みや趣向に合うのかどうかを気にかけていた。始まる前には、10ページにもわたって登場人物の肩書きが続き、始まったらしばらく退廃した近い将来の日本がリアルに描かれており、読み進めるにつれ重苦しい雰囲気が心を覆い始める。
しかし、概ね登場人物(というか視点となるべき立場)が出し尽くされると、スリリングに歯車は回り始める。しかし、どんでん返しが待っていたり、伏線が張られていたりすることはあまりなく、大筋では「判りやすく」進行していく。その分、リアルな描写と緩急で揺さぶられる緊張感は、かなりのボリュームにわたる「判りやすい」進行であっても、決して飽きてこない。
著者も分野も今までに読んだことのないものだったので、どう感想を述べてよいやらわからない。とりあえず感じたことを列挙してみる。反乱軍云々の前に、背景として描かれてた預金封鎖が何よりも怖かった。何かを選ぶというのは同時に別の何かを捨てることだが、それがわかっていない人間が大勢いる。という台詞が気に入った。最後に少しホッとしたシーンが描かれていて救われた気がした。
